冬の相棒であるコート。高価なものや思い入れのあるコートは、来シーズンも気持ちよく着たいですよね。しかし、コートは着ている時よりも保管している時にこそ、最も劣化が進む可能性があります。
特に日本の梅雨や高温多湿な環境は、コートにとって大敵です。型崩れ、虫食い、カビ……これらを防ぐためには、単にクローゼットに吊るすだけでは不十分です。
この記事では、衣類ケアのプロが推奨する、コートの寿命を最大限に延ばすための準備、環境設定、そして具体的な収納テクニックを徹底解説します。
来シーズンも新品のような状態で袖を通せるよう、今日から実践できるステップを見ていきましょう。
目次
コートの正しい保管方法!カビ・虫食いを防ぎ、寿命を10年延ばす

なぜコートはシーズンオフに劣化するのか
コートは通常、数ヶ月間クローゼットの中で放置されます。この期間に劣化が進む主な原因は以下の3つです。
- 残留汚れの酸化: 着用中に付着した目に見えない皮脂、汗、ホコリが繊維に残り、時間経過とともに酸化して黄ばみやシミに変化します。
- 湿気とカビ: 日本の夏は高温多湿です。クローゼット内の換気が悪いと湿度が上がり、カビが発生し、繊維を分解してしまいます。
- 虫食い: ウールやカシミヤなどの動物性繊維(獣毛)は、衣類害虫の栄養源です。汚れが残っていると、虫がそれを目印に集まりやすくなります。
適切な保管によるメリット
適切な保管を行うことで得られるメリットは計り知れません。
最も大きなメリットは、コートの「美しさ」と「寿命」を保てることです。型崩れや色褪せを防げば、高価なコートを何年も着用でき、結果的に買い替えの頻度が減り、長期的な費用節約につながります。
コートを保管する前のクリーニングとチェック
コートを収納する前に、必ず汚れをリセットする工程が必要です。この下準備の質が、コートの寿命を大きく左右します。
まだ数回しか着ていないから大丈夫と判断するのは危険です。目に見えない汚れこそが、カビや虫食い、そして黄ばみの原因となります。シーズンオフには、必ず専門のクリーニングに出しましょう。
素材別(ウール、カシミヤ、ダウン)のクリーニング注意点
- ウール・カシミヤ: 獣毛素材は特に虫に食われやすいため、必ず専門業者による徹底した洗浄が必要です。汗抜き加工や防虫加工を依頼するとより安心です。
- ダウン: 撥水性維持のため、専門のダウンクリーニングに出しましょう。もし自宅で洗う場合は、中綿の偏りや、乾燥不足によるカビに細心の注意が必要です。
自宅でできる簡単なお手入れ方法
クリーニングに出す前や日常的に着用した後は、以下のように簡単なお手入れを習慣にしましょう。
帰宅後はすぐに洋服ブラシ(馬毛など)を使って、ホコリや小さなゴミを優しく払い落とします。特に襟元、袖口、ポケットのフラップ裏は念入りに。部分的なシミや飲食の汚れなどがある場合は、放置せずに水で濡らして固く絞ったタオルで叩くように拭き取り、乾燥させます。
ポケットの中身チェックとホコリ取り
ポケットに鍵や財布、ティッシュなどを入れたまま保管すると、その重みで型崩れの原因になります。また、ティッシュの小さなカスやホコリも虫の餌になる可能性があります。
収納前には必ずポケットの中身を空にし、逆さまにして叩き、内部のホコリを完全に除去しましょう。
ダメージ箇所の補修(ボタン、裏地など)
ボタンの緩みや裏地のほつれを見つけたら、すぐに補修しましょう。ダメージを放置すると、次に着用する頃にはさらに悪化していることがあります。シーズンオフのこの時期は、修理に最適なタイミングです。
コートを長持ちさせる最適な保管環境は?
クローゼットはコートにとって最高の休憩場所であるべきです。理想的な環境は「低湿度・低照度」です。
湿気・カビ対策は除湿剤と換気
カビは湿度60%以上で活発化します。日本の夏場はすぐにこの湿度を超えるため、除湿対策は必須です。
除湿剤は空気より重いため、クローゼットの「下段」や「床」に置くと効果的です。また、時々クローゼットの扉を開けて、室内の空気と入れ替える「換気」を意識するだけでも、湿度は大きく下がります。湿度の高い雨の日は換気を避けてください。
防虫剤の正しい選び方と使用法
防虫剤は、衣類害虫からコートを守るためのお守りです。正しい使い方を知ることが重要です。
- 上部に配置: 防虫剤の成分は気化して空気より重くなり、下へ沈んでいきます。防虫効果を最大限に発揮するためには、コートの上部、ハンガーにかける部分などに配置しましょう。
- 容量を守る: 規定の量より多く使用しても効果は上がりません。パッケージに記載された使用量を守ってください。
複数種類の防虫剤を混ぜるのはNG!防虫剤にはパラジクロルベンゼン系、ナフタリン系、ピレスロイド系など様々な種類があります。これらの成分を混ぜて使用すると、化学反応を起こし、コートの生地や金属性のパーツを傷めたり、変色の原因になったりすることがあります。必ず一種類の防虫剤に統一しましょう。
日光・照明を避ける配置の工夫
直射日光はもちろん、蛍光灯やLED照明の紫外線も、長時間当たるとコートの色褪せや繊維の劣化(特にシルクや合成繊維)を引き起こします。クローゼットや押入れの扉を閉め光を遮断した状態で保管しましょう。
コートの適切な収納・保管方法は?
最も重要なのはハンガー選びです。細い針金ハンガーは肩に食い込み、不自然なシワや型崩れの原因になります。これは特に重いコートの場合は致命的です。
コート収納には、肩のラインに沿った厚みがあり、肩幅にぴったり合う木製ハンガーが最適です。木製ハンガーは適度な重さがあり、湿気を吸いにくい性質もあるため、型崩れを防ぎながらコート全体をしっかりと支えてくれます。
重いコートと軽いコートで使い分けるハンガーの基準
- 重いコート(メルトン、ダウンなど): 肩に厚み(3~5cm程度)と緩やかなカーブがあるハンガーを選び、首元のボタンを留めて吊るすことで、自重でシルエットを維持させます。
- 軽いコート(トレンチ、スプリングコート): 厚みがなくても、肩先が丸みを帯びたしっかりしたプラスチック製や、滑り止めがついたハンガーを使用し、ずり落ちを防ぎましょう。
カバーの活用:通気性の良い不織布を選ぶ
ホコリや紫外線からコートを守るために、カバーをかけるのは有効です。ただし、素材選びを間違えると、かえってコートを傷めてしまいます。
ビニール製カバーはNG!クリーニング店から戻ってきた際についているビニール製のカバーは、通気性が悪いため、そのまま長期保管に使用するのは避けてください。内部に湿気がこもり、カビや変色の原因となります。長期保管には、通気性の良い不織布(ふしょくふ)製の洋服カバーを使用しましょう。
詰め込みすぎは厳禁:衣類間のスペースを確保
コート同士が密着していると、通気性が極端に悪化し、湿気がこもります。また、摩擦や圧迫によりシワや型崩れの原因にもなります。
コートの前後左右に、手のひら一枚分ほどのスペースを設けて吊るしましょう。これにより、湿気がたまりにくくなり、防虫剤の成分も均一に拡散されます。
絶対NG!コートの寿命を縮める間違った保管方法
良かれと思ってやっていることが、実はコートの寿命を縮めているかもしれません。以下のNG行動は絶対に避けましょう。
クリーニングタグをつけっぱなしにしない
クリーニング後についてくる「ホチキス留めのタグ」は、そのままにしないでください。タグのインクが湿気でコートに色移りしたり、ホチキス(金属)が錆びて生地を傷めたりすることがあります。保管前に必ず取り外しましょう。
畳んで重ねておく収納は避けるべき理由
スペースの都合でコートを畳んで収納するのは、可能な限り避けましょう。ウールやカシミヤなどの獣毛素材は、一度ついたシワが非常にとれにくく、折り目部分の繊維が潰れてしまいます。特に重いコートを一番下に重ねると、重圧で完全に型崩れを起こします。
【例外】ダウンコートなど、元々シワになりにくい素材や、圧縮が可能なものは畳み収納も選択肢に入りますが、その場合でも圧縮しすぎないよう注意が必要です。
コートの定期的な状態を確認
一度クローゼットに入れたら、次の冬まで触らないのは大変危険です。カビや虫食いは急に進行することがあります。
衣替え後1~2ヶ月経った頃(湿度の高い梅雨明けなど)に一度クローゼットを開け、カビや虫食いの初期症状がないか、防虫剤の効力が切れていないかを確認しましょう。この早期発見が、コートを救うことにつながります。
お気に入りのコートを長く着続けるには、こまめなチェックが欠かせませんよね。コートの定期的な状態を確認することで、小さなダメージも早めに気づけて、大切な一着をずっと美しく保てるんです。
まず見ておきたいのが生地の様子。袖口や脇の下あたりに毛玉ができていないか、日に当たる部分が色あせていないか、触ってみてテカリが出ていないかなど、全体的に目を通してみましょう。ボタンがぐらついていたり、ファスナーの動きが悪くなっていたりしないかも要チェックです。裏地の破れや、ポケットの穴も見逃しやすいポイントですね。
着た後はブラッシングでホコリを落として、風通しの良い場所で休ませてあげると、生地も喜びますよ。シーズンが終わったら、プロのクリーニングにお願いするのもおすすめ。コートの定期的な状態を確認する習慣をつけておくと、ちょっとした変化にもすぐ対応できて、修理も最小限で済みます。日々のケアが、長持ちの秘訣なんです。
まとめ
コートの保管は、次の冬への「準備」です。適切な下準備(クリーニングと修理)、そして最適な環境(除湿・防虫)を整えることで、高価なコートは長く、美しく着続けることができます。
特に重要なポイントを再確認しましょう。
📌ポイント
- シーズンオフには必ずクリーニングに出し、汚れをリセットする。
- 肩幅に合った厚手のハンガーと不織布カバーで型崩れとホコリを防ぐ。
- クローゼットは除湿剤と換気で低湿度を保ち、防虫剤は混ぜて使わない。
- 詰め込みすぎを避け、衣類間に通気スペースを確保する。
手間をかけた分だけ、コートはそれに応えてくれます。今年のオフシーズンは、ぜひプロの保管術を実践し、来たる冬に備えてくださいね。

